方程式 F([x,y,z])=x^2+y^2+z^2-3xyz=0 を満たす自然数の三つ組の解ベクトル
[x,y,z] を Markov triple vector と呼ぶ.[1,1,1], [1,2,1], [1,5,2], ... に
始まる無限の解ベクトルの存在については生成原理とともによく知られている.
Markov triple vectors 全体の集合を M で表し,他方で,各 N>1 について
合同方程式 F([x,y,z])\equiv 0 (mod N) を満たす (Z/NZ)^3 のベクトル [x,y,z]
(ただし明らかな条件 (x,y,z,N)=1, etc. を付す) の全体の集合を M_N で表す.
このとき,著しい現象が観察される : M から M_N への自然な reduction map
は全射のようだ.N<200 までに反例はない.全射性は自明なことではないだろう.
しかし,特殊な場合ながら N=3^e のときはこの全射性を証明することができる.
議論の要点は群論的方法である.M, M_N にはモジュラー群 PSL_2(Z) が自然な形
で作用する.M_N への作用の可移性が示されるならば目的は果たされることになる.